能登半島地震により、ライフライン(電気、ガス、水道、通信、交通網)の復旧には時間がかかり、1か月以上経過しても未だに復旧していない地域が存在します。その結果、医療、介護、教育が必要な人々が一次避難所から二次避難所へ移動を始めています。孤立した集落からライフラインが整備された場所への集団二次避難も行われています。故郷に戻れるかどうかという不安は、計り知れないものでしょう。
「いつも」と「もしも」の境界線がない「フェーズフリー」を
災害時にライフラインをどう確保するか、備蓄が重要だと言われますが、目安とされる3日~7日分では足りないと、能登半島地震を見て感じます。被災地が広範囲に及ぶと、支援物資が届かない。都市部などの人口密集地での災害では、支援物資の量が圧倒的に不足するでしょう。
家庭や会社単位で人数分の物資を備蓄すると、その量はかなりのものになります。収納場所に困ることは当然で、普段からチェックをしていなければ、いざというときに消費期限が切れていたり、使い方がわからず、誤使用したり役立たなかったりすることもあります。
そこで注目したいのがローリングストックです。普段使うものを保管し、使い終わった分を補充する方式なら、消費期限切れを防ぐことができます。食べ慣れた、使い慣れたものであれば、災害時の精神的な不安を和らげる一助になるかもしれません。
これが「備えない備え」です。「いつも」と「もしも」の境界線がない「フェーズフリー」とも言われます。
電気を得るために、雨天時に発電機を玄関内で稼働させたり、暖を取るために練炭を使用する際は、一酸化炭素中毒に注意しなければなりません。これは「もしも」の時に起こりやすい事象です。普段から使い慣れていないからです。太陽光発電のように屋根の上で発電し、使用できるのであれば、こうした事故は防げます。
ただし、停電時の操作方法を理解し、操作できることが前提です。手動操作で自立モードに切り替え、専用のコンセントから1,500Wまでの電気を使用できます(晴天時など発電できていることが大前提ですが……)。これも「もしも」の時のことです。
蓄電池があれば、停電時に自動で電気を供給し、復電時に自動で元に戻します。つまり、操作は不要です。専用コンセントではなく、すべての部屋で200Vも使える機種もあります。普段と使い勝手が変わらないので、「いつも」のままで困ることはありません。
「いつも」と「もしも」の境界線をなるべくなくした、「備えない備え」を日常にすることが、防災の新しい考え方ではないでしょうか。