「ふるさとは遠きにありて思ふもの、そして悲しくうたふもの」という室生犀星の望郷の詩句。これは、遠方にいて故郷を思う詩ではなく、犀星が東京での生活がうまくいかず、金沢に帰郷しても温かく受け入れてもらえない悲哀が「遠きにありて」となったと言われています。
消滅する可能性がある自治体は全体の4割に。
現代では、「ふるさとは困るもの」に変わる可能性があると言えます。
2024年4月24日に人口戦略会議が発表した「消滅可能性自治体」は744自治体に上ります。若年女性人口が2020年~2050年までの30年間で50%以上減少し、人口が急減して最終的に消滅すると予測されています。
ふるさと再生や移住活動に取り組んでいる自治体にとっては、これは大きな打撃となるでしょう。
「消滅可能性自治体」に含まれているエリアに実家があり、その土地や家を相続したらどうなるのでしょうか。
近隣に人がいない、お店もないから生活ができない。ライフラインの維持も困難です。人がいなくなれば動物たちが山から里に下りて暮らすでしょう。売却するにも住もうとする人はいないから売れない。固定資産税はかかり続け、人里離れていてお金がかかるから解体を躊躇うどころか、放置状態になる。
一方で、これまで任意だった相続登記が2024年4月1日から義務化されました。土地や家の所有者を明確にし、責任の所在を明らかにし、所有者不明土地を無くすためのものです。登記しないと10万円以下の過料や差し押さえとなりますが、それが楽な場合もあります。遺産分割で揉めたり、別の街で住まいを構えた子供たちは故郷には戻らない。休みに維持管理のために故郷に戻ることはできない。負の資産となります。
故郷は遠くだからこそ困るのです。土地や家、墓さえも処分してあの世に向かわないと子供たちが困るのです。744自治体には何軒の住居があるのでしょうか。何人の子や孫たちがいるのでしょうか。
今のうちに故郷を売却し、街の中心部に住み替えて多世帯で暮らす。これが最適解かもしれません。